- 作者: 津村記久子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/06/10
- メディア: 文庫
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「(前略)死ね! 働かないやつは死ね!」
——コピー機の話である。正確には複合機だが。スキャンやプリントはそれなりにさくさく働くくせに、コピー機能を使おうとするとてんで駄目、という奴「アレグリア」。そいつに対して孤軍奮闘する女子社員ミノベの怒りの台詞が記事冒頭の引用。ちょっとさすがに攻撃的すぎるし苛々しすぎではないかとも思うけれども、この孤軍奮闘というのがそりゃあもうつらいものであることだけは間違いないので、彼女がああなってしまうのも仕方がないのではと同情めいたものを覚える。わかってもらえないというのは、つらい。ただそれだけの話なのだ。しんどいよな、つらいよな、と思いながら読んだ。彼女が暴れまわっているからこそ先輩は黙っていられるのだよなとも思う。うちのアレグリアはどいつだ? あ、3Dプリンタか……。あいつなあ……。と、自分の現実に想いを馳せるのであった。機械の擬人化、するよね。
併録「地下鉄の叙事詩」。人間どこでどう観察されているかわからないよという話。妄想上の暴力。実際に起こる暴力。尊厳、の、こと。冒頭からなかなか不快。こっちもなんか苛々してるひとたちだなあ、と思う。まあ閉じ込められてるときって思考が暴走しがちではあるんだけど。暗くて狭くて不自由なうえ思いやりすら見えなくてなんにも感じられないと、人間は容易に暴力的になるのだ。
自分は満員電車から早々に逃げ出したくちなのでのんきに傍観者でいられるが、これ、本当にぎゅう詰めの電車で通勤してる人が読むと相当きついだろうなあと思う。理解すると不愉快が同時にやってくるんだもの。想像だけでも苦しかった。がんばったね、シノハラさん。
暴力について考えたので、ちょっと疲れた。