空を飛ぶ夢くらい見ろ

エンタメ備忘録

国語辞典に潜って遊ぶ

ふと辞書を引いてみて驚いた。「眇める」って、その一語で「片目を細くする」ことをあらわしているのね。片目のしぐさ限定だとは思っていなかったので、えっ、と、驚きが声に出てしまった。
待てよ。そうすると、「目を眇める」という書き方をすると、重言になってしまうのかな? あと、本当に、両目を細くするしぐさをあらわすときには使えない言葉なのかな。……などと、辞書をひっくり返し、webをあちこちさまよって、たっぷり冒険をした気分になっている。久しぶりの感覚だ。楽しかった。

知らなかったことを知ることは、とてもおもしろい。自分の興味のある分野ならなおさらだ。時代が過ぎれば言葉の意味も変わっていってしまうかもしれないけれど、それはそれでよい。

この記事の中程に、「不機嫌な言葉くん」が登場する短い文を書いていたが、なんだか恥ずかしくなって消した。青春小説っぽい何かだった。SF作家の誰かが、きっと、いつかどこかで書いているとも思った。

破妖の剣(6) 鬱金の暁闇(29)/前田珠子

もうこれ読了記事なんか書かなくてもいいんじゃないかなあ、と思わなくもない。発売日に買って読んだのに「何書けばいいんだこれ」と頭を抱えて放置してたしな。しかし「読んだものについて全部書くぞ!」と意気込んだ以上、避けてはならんだろう……と重い腰を上げてみた。
感想としては「案外内容も進んだ気がする」、感情としては「カタルシスが足りないなあ」。ネット上のあちこちで言われてる「“泥闇とモブ”エピソードってほんとに必要なの?」という気持ちには案外なってない。実際、世界観の広がりを描く手段としては好きなんですよね。しかしながら、本編がこの牛歩……蝸牛……状態なので、これであの薄っぺらい本の半分を持っていかれてると思うと確かに微妙な気持ちにもならなくもない。わたしが残念がっているのは、どうも書き方で損してる気がしているから。泥闇と燦華のやりとりとか「まだやるのー……?」とげんなりしながら読んだんだけど、「至上と信じた神に裏切られた失意」と「主人に裏切られた手足の暴走」が連なって世界の破滅に至る、とかなかなか壮大なことになっているのに、長々だらだら思考する文章が続くせいで緊張感が欠片もない。今更言っても仕方ないんだが、なんかこう……この……誰か意見する人いないんですか、これで?
愚痴になってしまった。何書けばいいんだとか言いながらけっこう書いたな。お話に対する思い入れは強いんですよ、本当に。ピンチに陥ったとき「こんなときには」と言いながら何かを思い出す描写が入り、すわラブ展開かと思いきや、安定のラエスリールさんは紅蓮姫のことしか考えてなくて笑ったりとかしたんですけどね。

余談。アマゾンレビューとかついてんのかなーどんなこと書いてんだろと興味本位で見にいったらほぼ全編ネタバレのレビューがついてて「そりゃ確かに話は薄っぺらいが、さすがにあんまりな仕打ちではないだろうか」と思った次第です。

黒猫邸の晩餐会/嬉野君

黒猫邸の晩餐会 (講談社文庫)

黒猫邸の晩餐会 (講談社文庫)

ほっこりミステリ、と惹句にあるのだけれど、これほっこりとは違うんじゃない? みんな背負ってる過去かなり重くない? いえ、まあ、どうせ作家買いなのでそれほど気にしてないんですけど——。
というわけで「金星特急」の嬉野君、新作。現在を昭和初期・自分を二十代と信じる認知症の祖母、彼女のために亡くなった祖父のふりをする孫息子、この夫婦(?)のもとに招かれる研究員女子、という奇妙な構図のお話。日常ミステリでもあるけれど、ちょくちょくオカルトが挟まってくるのが味になっているか。まあでも話の引き締め役としてのMVPはどう考えても今村さんだと思います。なんだあれ萌えキャラか。黒猫フミエもかわいいですけどまあ猫だからな……。続刊が楽しみ。